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「月に咲くバラ」(Moonlight and Roses)~『黒い天使』
長篇『黒い天使』第9章に登場する曲です。
夫の無実を信じる主人公“エンジェル・フェイス”が、ナイトクラブの潜入捜査を試みる場面。踊り子としてオーディションを受けるものの、ダンスの心得はまるでなし。伴奏に頼んだ曲が、夫の好きな「月に咲くバラ」でした。
オリジナルは1925年、作詞作曲はBen Black&Neil Moret、Ray Miller Orchestraによる演奏です。
オリジナルのCDは現在は手に入らないようですね。でも探してみると、こことかここで無料で聴くことができました。
聴きながら読み返してみると、小説の印象までがらっと変わってしまい驚きました。タイトルだけ知っている「月に咲くバラ」をリクエストしたはいいけれど、踊りのできない“エンジェル・フェイス”は曲のテンポに合わせられずに尻餅をついてしまいます。この場面、特にどうということもなく読んでいたのですが、この曲があるだけでドタバタコメディに早変わりです。チャップリンの映画とかみたい。
ウールリッチというと、おそらく読者の方も訳者の方も、ロマンチックとかセンチメンタルとか先入観を持ってしまいがちですが、実に意外な顔も持っているものです。
曲は前半がイントロ。後半にボーカルが入っています。実にのんきというか、もはやノーテンキといってもいいような、王道オールド・ジャズ・ナンバー。ズンチャ、ズンチャ、ズンチャ、ズンチャ♪のリズムが心地よい。
だけどウールリッチが書いているのはこの曲のことでいいのだろうか? 「テンポがスローすぎて」と書いてあるけど、この曲に合わせて「ピルエット」というのはスローどころか半端じゃない技術のような気がする。そりゃ尻餅もつきますよ。
はてな?と思い確認してみると、Vaughn Monroeが歌っているバージョンは、“エンジェル・フェイス”も言うように「テンポがスローすぎ」る曲でした。低い声でまったりこってり歌い上げるタイプの曲です。「My Funny Valentine」みたいなやつ。この手のタイプはかなり苦手です。
こちらは確認したのですが何年の発表かわかりませんでした。でもおそらくウールリッチの頭にあったのはこっちでしょう。う~んでもそうなると、ウールリッチのコメディセンスというのは勘違いか。いやそもそもピアニストがスローにアレンジしていただけかもしれないし、わかりませんが。
月に咲くバラ
月の光に咲くバラが
きみに思い出を届けてくれる
ぼくの心も安らいだ
とびきり素敵な思いつきに。
初夏の光にさらされて
恋のきらめきがよみがえる
月の光に咲くバラが
届けてくれる、思い出を。
On the Moonbeam/Down Memory Lane
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