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名作「ハミング・バード帰る」より。鼻歌を歌いながら人を殺す銀行強盗“ハミング・バード”――かれが口ずさむ曲が、この「セント・ルイス・ブルース」です。
あの夕日が沈むのを見るのが切なくて
きょうの思いはあすもかわらず
トランクに荷を詰めて逃げだそうと
心は海になげられた石に似て(村上博基訳)
彼に去られた女が街を出ようと決意するけれど、やっぱり愛してる、という内容。村上氏も稲葉明雄氏も、「I hate」をそれぞれ「切なくて」「こころ悲し」と訳しております。杓子定規に「憎む」じゃないところがお二人ともさすがだなーと感心しきりです。都筑訳と稲葉訳はなんとなく調子が似ているので、なにか定訳みたいなのがあってそれを引用したのかもしれません。
ウィリアム・ハンディ作による、スタンダード・ナンバー中でもとりわけのスタンダード。わたしが持っている盤はビリー・ホリデイが歌っているもの。『Billie Holiday 1939/42』。そしてビリー・ホリデイ版こそおすすめです。ビリー・ホリデイが歌うちょっと蓮っ葉でいて包み込むようなあねご肌の声を聞いていると、いかにも古き良きジャズの雰囲気にどっぷり浸かって、ハミング・バードの残酷な犯行も、白黒やセピア色のオールド・ムービーのよう(銃声はするけど血糊はなし)。なおかつ、あのちょっとだみ声に近い、かすれているのにかさかさしてない甘い声(甘いのに鬱陶しくないかすれ声)が、切なくて残酷でほろりとする作品の雰囲気を盛り上げてくれます。
村上氏が訳していない部分もなんとか村上訳風に訳してみようとしたのですがどうもうまくいかず、演歌みたいになってしまいました。
セント・ルイス・ブルース
あの夕日が沈むのを見るのが切なくて
あの夕日が沈むのを見るのが切なくて
あのひとが出ていったこの街で
きょうの思いはあすもかわらず
きょうの思いがあすもかわらずつづくなら
トランクに荷を詰めて逃げだそうと
ダイヤを填めたセント・ルイスの
女に魅かれてあのひとは
あの女さえいなければ
どこにも行かず、どこにも行かず
いまのあたしはセント・ルイス・ブルース
とってもブルー
心は海になげられた石に似て
さもなきゃ遠く離れてゆくはずもなく
わたしにとってあのひとが 子どものお菓子
ケンタッキーさんのミントとライ麦
死ぬまでずっと好きなもの
Billie Holiday 1939/42
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Blue Billie
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